以前に如雲社という会が京都であって、確か毎月裏寺町で開かれていたが、ここには京中の各派の社中の方々が思い思いの出品もされ、私もそのいいのをよく見取りもさせて貰った。ほんとうに楽しんで面白く、和気靄々裡に一日を過ごすといった風の会だった。時代の変化でそうした親睦さは今ではちょっと出来にくかろうけれど、こういう風の会はこれ迄この会以外には見られない位に考えられる。のんびりとしたいい会であったと思うと懐かしい。
せめてこの様な会が当節でも一つ位あったらよかろうにと折ふしに思われる事でもある。そのころの美術雑誌で『煥美』というのがあって、いつかその雑誌で松年先生と久保田米僊さんとが、画論に争論の花を咲かせたことも覚えているが、世の中の向上とか進展などというものには、様々の議闘もまた争論も生れる、しかしよくも悪くもこれは過去をふりかえった時には、微笑ましい愉悦さを覚えしめるものと私は思えてならない。
[#地付き](昭和十三年)
底本:「青帛の仙女」同朋舎出版
1996(平成8)年4月5日第1版第1刷発行
初出:「帝国美術」
1938(昭和13)年11月号
入力:川山隆
校正:
前へ
次へ
全3ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
上村 松園 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング