を沢山もっているので、これから機会のある度に、一つずつ描き残して置きたいと思う。
 世の中が急激に移り変ってゆくのを眺めるとき、わたくしには、余計にあの頃の風俗をのちのちの人のために描き残したい念願がつよまるのである。

 あの頃の京の町の人たちのもの静かで、心の優しかったこと……
 今の人に、もの静かさをもとめるのは無理なのかも知れない。が、優しさだけは、取り返して貰いたいものと思う。そういう意味においても、あの頃の人たちの優しい姿を描き、それを現今の人に見て貰うのも、ひとつの彩管報国なのではなかろうかと思っている。



底本:「青眉抄・青眉抄拾遺」講談社
   1976(昭和51)年11月10日初版発行
   1977(昭和52)年5月31日第2刷
入力:川山隆
校正:鈴木厚司
2008年4月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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