れどころではないほど長い人もいたが、近来にはそんな長い人はなくなった。私がはたち時分に島田や桃割にしていると、髪結さんが困ったものだった。どういうわけかと言うと、そのあとの毛を根に巻きつけるとか、何処かにぐるぐると入れるのだが、私のは毛がながいために入れるところがない。それで私は櫛巻にしている。若い時分から櫛巻ばかりでつづけてきた。こうしておくとその手につかみ切れぬほど多い毛の始末にこまるということがない、で櫛も特に大きなのを使って、それにぐるぐると巻きつける。そうして外を歩くと、子供達が、あの人のまげは大きな髷だと言って、よく見られたものでした。その恰好が丁度、アルラカルラの仏像のあたまのようでした。でもいまはよほど少なくなったけれども……。
 私の毛は枝毛と言うのでしょうか、先の方へ行って、すぽっと細くなっていない。そのころは母に結って貰っていましたが、母も荷厄介にしていて、「また大たぐさに結う……」と言っては結ってくれたものです。
 櫛巻にしていると、簡単で、自分の手で出来て、身が楽で、つとやねかもぢを入れて、中ぼんのところがつるつるに禿げる事もなく、毛たぼをいっぱいにつめこんで
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