ある。
この姉妹は、額のところに、少しばかりアイロンをかけて、髪を渦巻にしているほか、あとはすらりと項《うなじ》のところへ、黒髪を垂らし、髪のすそを、ふっくらと裏にまげていた。
こういう新しい型の髪が、心ある美容師によって考案されたのであろうが、姉の顔立ちと言い、妹の顔立ちと言い、横から眺めていると、天平時代の上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]をみている感じで、とても清楚な趣きを示しているのであった。
色の白い、顔立ちのよく整った、この二人の姉妹は、そのまま昔の彫刻をみている思いであった。
「洋髪でも、これくらい日本美を立派に取り入れた、これくらい気品のあるものなら、自分も描いてみたいものである」
わたくしは、そう思うと、そっと小さなスケッチ帳を取り出して、こっそり写生した。
わたくしは、汽車の中で、現代の女性を写生しながら、心は天平時代の女人の姿を描いているのであった。
なにごとも工夫ひとつで――むしゃむしゃの電髪も、このように「日本美」というものを根底に置いて考えれば、実に立派な美的な髪が生まれるのである。
ひと頃のように、何でもかでも
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