ろとんぼ」に傍点]などという髪を結っている女の子は今は何処に行ったとて見ることは出来ないでしょう。ちか頃の女の子はみなおかっぱにして膝っきりの洋服を着ていますが、なかなか愛らしくて活溌で綺麗です。そうした女の子達を見ていると昔のつつ[#「つつ」に傍点]をきゅうとしばったうしろとんぼ[#「うしろとんぼ」に傍点]の時代は、あれは何時のことだったのかと我れといぶかしく思うくらいなのですから。
でも、なつかしさはなつかしさですし、昔のよさはよさ、今でもはっきりとまるで一幅の絵のように何十年か前の京都の街々のすがたを思い浮べて一人楽しんでいる時がないでもありません。
私が十七、八の頃、夕涼みに四条大橋に行って見ると、橋の下の河の浅瀬には一面に床几《しょうぎ》が並べられ、ぼんぼりがとぼって、その灯かげが静かな河面に映って、それはそれは何とも美しいものでした。沢山の涼み客がその床几に腰をかけ扇子を使いながらお茶をすすったり、お菓子をつまんだり、またお酒を汲みかわしたりして居るのです。橋際にふじや[#「ふじや」に傍点]という大きな料理屋があって河原に板橋を渡して仲居さん達がお客のおあつらえのお料理
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