音」新古美術品展出品(三等銅牌)
同 四十三年 「人形つかひ[#「人形つかひ」は底本では「人間つかひ」]」新古美術品展出品(二等銀牌)「花」巽画会展出品(二等銀牌)「上苑賞秋」文展第四回出品(三等賞)
大正  二年 「化粧」「螢」文展第七回出品(三等賞)
同   三年 「娘深雪」大正博出品(二等一席)「舞仕度」文展第八回出品(二等賞)
同   四年 「花がたみ」文展第九回出品(二等賞)
同   五年 「月蝕の宵」文展第十回出品(推薦)
同   七年 「焔」文展第十二回出品「天人」
同  十一年 「楊貴妃」帝展第四回出品
同  十五年 「娘」聖徳太子奉賛展出品「待月」帝展第七回出品
昭和  三年 「草紙洗」御大典記念御用画
同   四年 「伊勢大輔」「新螢」伊太利日本画展出品
同   五年 「春秋二曲屏風一双」高松宮家御用画
同   六年 「虫ぼし」独逸ベルリン日本画展出品
同   七年 「虹を見る」
同   八年 「春秋双幅」高松宮家御用品
同   九年 「青眉」京都市展出品「母子」帝展第十五回出品
同   十年 「天保歌妓」春虹会展出品「鴛鴦髷」東京三越展出品「春の粧」大阪美術倶楽部記念展出品「土用干」東京三越展出品「夕べ」五葉会展第一回出品「春苑」東京高島屋展出品
同  十一年 「春宵」春虹会展出品「時雨」五葉会展出品「序の舞」文部省美術展覧会出品「秋の粧」京都表装展出品
同  十二年 「春雪」春虹会展出品「夕べ」学習院御用画
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     「花ざかり」

 制作表を見ておりますと、一つ一つの絵について、さまざまの思い出が心に浮かんでまいります。
 明治三十三年に日本絵画協会へ出品いたしました「花ざかり」は、花嫁とその母とを描いたものでございます。その頃、私の家の本家の娘がお嫁入りすることになりました。昔のことですから、美容院などというものはなく、髪は髪結いさんに結《ゆ》ってもらいますが、お化粧は身内の者がいたします。
「つうさんにしてもろうたらよかろう」
 私の名前はつねと申しまして、つうさん、つうさんと呼ばれておりました。そこで私は、三本足というて、襟足を三筋塗り残して、襟足を細《ほっ》そりみせる花嫁のお化粧をいたしてやりました。その折りに、身近に見る花嫁の高島田や母親の髪などをスケッチしたりしましてあの「花ざかり」ができたのでございます。

     「花がたみ」

 花がたみは謡曲の「花がたみ」から取材したもので、大正四年、文展に出品したものでございます。狂女を描くのですから、本当の狂人をよく観たいものと思い、岩倉精神病院へ、二、三度見学にまいったものでした。院長に案内されて病棟を歩きますと、千差万別の狂態が見られました。夏のことで、私は薄い繻珍《しゅちん》の帯をしめておりましたが、繻珍の帯が光ったのか、一人の狂女が走りよって、
「奇麗な帯しめてはる」
 と、手を触れて見ておりました。一室には、もと、相当なお店のお内儀《かみ》さんだったという品のよい女がおりました。舞を舞うのが好きと見えて、始終、何やら舞うていると聞きましたので、私が、謡《うたい》をうたってみますと本当に舞いはじめました。男女さまざまな狂態を見まして、これは一種の天国だと思いました。挨拶、応答など、聞いておりますと、これでも狂人かしらと思われるほど常人と変わらない人も、目を見るとすぐ解りました。

     「母子」

 祇園祭りの時でしたでしょうか、ずっとずっと昔のことです。中京の大きなお店に、美しい、はん竹の簾《すだれ》がかかっておりました。その簾には、花鳥の絵が実に麗しく、彩色してありましたので、頭にはっきり残りました。
 ある年、あの簾を配して何か人物を描いてみようと思いつきました。いろいろの人物をあの記憶の簾の前に立たせて見て、もっとも心に適《かな》ったのが母子《おやこ》の姿でした。これが、昭和九年、帝展出品の「母子」になったのでございます。

     「序の舞」

 昨年(昭和十一年)、文展に出品いたしました「序の舞」は、品のよい令嬢の舞い姿を描きたいものと思って描き上げたものでございます。仕舞のもつ、古典的で優美で端然とした心持を表わしたいと思ったのでございます。そこで嫁を、京都で一番品のよい島田を結う人のところへやりまして、文金高島田を結ってもらいました。そして婚礼の時の振袖を着てもらい、いろいろな仕舞の形をさせ、スケッチいたしました。途中で、中年の令夫人にしようかとも思いましたので、早速嫁に丸髷を結ってもらい、渋い着物を着て、立ってもらったこともございました。私の謡の先生の娘さんがよく仕舞を舞われますので、いろいろな仕舞の形をしてもらって、それも、スケッチいたしました。
 いよいよ令嬢で、形は序の舞のあの
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