冷たい秋風が、濡れた窓硝子をはたはたと鳴らしていた。そして、その秋風に誘われて来たような一脈の哀愁が、しんみりと室《へや》じゅうに沁みわたった。
マダム・シャリニは肱掛椅子の背にぐったりと頸《うなじ》を凭《よ》せて、夢見る女《ひと》のように、ぼんやり空間を見つめていた。
人々はその晩に限って、常よりも早く散り散りに帰って行った。
底本:「夜鳥」創元推理文庫、東京創元社
2003(平成15)年2月14日初版
初出:「新青年」
1923(大正12)年8月増刊号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2007年12月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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