タノ》シキ小波《サザナミ》、スベテ、コレ、ワガ命《イノチ》、シバラクモ生《イ》キ伸《ノ》ビテミタイ下心《シタゴコロ》ノ所為《ショイ》、東京《トウキョウ》ノオリンピック見《ミ》テカラ死《シ》ニタイ、読者《ドクシャ》ソウカト軽《カル》クウナズキ、深《フカ》キトガメダテ、シテハナラヌゾ。以上《イジョウ》。

 山上の私語。
「おもしろく読みました。あと、あと、責任もてる?」
「はい。打倒のために書いたのでございませぬ。ごぞんじでしょうか。憤怒《ふんぬ》こそ愛の極点。」
「いかって、とくした人ないと古老のことばにもある。じたばた十年、二十年あがいて、古老のシンプリシティの網の中。はははは。そうして、ふり仮名つけたのは?」
「はい。すこし、よすぎた文章ゆえ、わざと傷つけました。きざっぽく、どうしても子供の鎧《よろい》、金糸銀糸。足なが蜂《ばち》の目さめるような派手な縞模様《しまもよう》は、蜂の親切。とげある虫ゆえ、気を許すな。この腹の模様めがけて、撃て、撃て。すなわち動物学の警戒色。先輩、石坂氏への、せめて礼儀と確信ございます。」

 われとわが作品へ、一言の説明、半句の弁解、作家にとっては致命
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