う。それなのに、ヒラメのいやに用心深く持って廻った言い方のために、妙にこじれ、自分の生きて行く方向もまるで変ってしまったのです。
「真面目に私に相談を持ちかけてくれる気持が無ければ、仕様がないですが」
「どんな相談?」
自分には、本当に何も見当がつかなかったのです。
「それは、あなたの胸にある事でしょう?」
「たとえば?」
「たとえばって、あなた自身、これからどうする気なんです」
「働いたほうが、いいんですか?」
「いや、あなたの気持は、いったいどうなんです」
「だって、学校へはいるといったって、……」
「そりゃ、お金が要ります。しかし、問題は、お金でない。あなたの気持です」
お金は、くにから来る事になっているんだから、となぜ一こと、言わなかったのでしょう。その一言に依って、自分の気持も、きまった筈なのに、自分には、ただ五里霧中でした。
「どうですか? 何か、将来の希望、とでもいったものが、あるんですか? いったい、どうも、ひとをひとり世話しているというのは、どれだけむずかしいものだか、世話されているひとには、わかりますまい」
「すみません」
「そりゃ実に、心配なものです。私も、い
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