ら十年、とすると、もう亡くなっているかも知れないね。これは、あなたへのお礼のつもりで送ってよこしたのでしょう。多少、誇張して書いているようなところもあるけど、しかし、あなたも、相当ひどい被害をこうむったようですね。もし、これが全部事実だったら、そうして僕がこのひとの友人だったら、やっぱり脳病院に連れて行きたくなったかも知れない」
「あのひとのお父さんが悪いのですよ」
 何気なさそうに、そう言った。
「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」



底本:「人間失格」新潮文庫、新潮社
   1952(昭和27)年10月30日発行
   1985(昭和60)年1月30日100刷改版
入力:細渕真弓
校正:八巻美惠
1999年1月1日公開
2004年2月23日修正
青空文庫作成ファイル:
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