でも、とうさんのお眼は、綺麗な景色を百倍も千倍も見て来たかわりに、きたないものも百倍も千倍も見て来られたお眼ですものね。」
「そうよ、そうよ。プラスよりも、マイナスがずっと多いのよ。だからそんなに黄色く濁っているんだ。わあい、だ。」
「生意気を言ってやがる。」
 兄さんは、ぶっとふくれて隣りの六畳間に引込みました。
(「少女の友」昭和十九年五月号)[#地付き、地より2字あき]



底本:「ろまん燈籠」新潮文庫、新潮社
   1983(昭和58)年2月25日発行
   1998(平成10)年7月20日第21刷発行
初出:「少女の友」
   1944(昭和19)年5月号
入力:みやま
校正:鈴木厚司
2000年11月24日公開
2009年3月2日修正
青空文庫作成ファイル:
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