這《ば》いになり、
「馬鹿、乱暴はよせ。男類、女類、猿類、まさにしかりだ。間違ってはいない。」
もう半分眠っているくらいに酔っぱらっているのでした。手向いしないと見てとり、れいの抜け目の無い紳士、柳田が、コツンと笠井氏の頭を打ち、
「眼をさませ。こら、動物博士。四つ這いのままで退却しろ。」
と言って、またコツンと笠井氏の頭を殴《なぐ》りましたが、笠井氏は、なんにも抵抗せず、ふらふら起き上って、
「男類、女類、猿類、いや、女類、男類、猿類の順か、いや、猿類、男類、女類かな? いや、いや、猿類、女類、男類の順か。ああ、痛え。乱暴はいかん。猿類、女類、男類、か。香典《こうでん》千円ここへ置いて行くぜ。」
底本:「太宰治全集9」ちくま文庫、筑摩書房
1989(平成元)年5月30日第1刷発行
1998(平成10)年6月15日第5刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版太宰治全集」筑摩書房
1975(昭和50)年6月〜1976(昭和51)年6月発行
入力:柴田卓治
校正:かとうかおり
2000年1月24日公開
2005年11月6日修正
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