古着屋のまへでしたので、その店の古着を早速着せられました。女の子の浴衣でした。帯も、緑色の兵古帯でした。ひどく恥かしく思ひました。叔母が顔色を変へて走つて来ました。
 私は叔母に可愛がられて育ちました。私は、男ツぷりが悪いので、何かと人にからかはれて、ひとりでひがんでゐましたが、叔母だけは、私を、いい男だと言つてくれました。他の人が、私の器量の悪口を言ふと、叔母は、本気に怒りました。みんな遠い思ひ出になりました。



底本:「太宰治全集 10」筑摩書房
   1990(平成2)年12月25日初版第1刷発行
初出:「西北新報」
   1941(昭和16)年1月1日
※初出情報は、底本603ページの解題に示された「推定」による。
入力:砂場清隆
校正:林 幸雄
2002年12月3日作成
青空文庫作成ファイル:
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