喝采
太宰治
手招きを受けたる童子
いそいそと壇にのぼりつ
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)桃金嬢《てんにんか》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)冷汗|拭《ぬぐ》うて思うことには、
−−
「書きたくないことだけを、しのんで書き、困難と思われたる形式だけを、えらんで創り、デパートの紙包さげてぞろぞろ路ゆく小市民のモラルの一切を否定し、十九歳の春、わが名は海賊の王、チャイルド・ハロルド、清らなる一行の詩の作者、たそがれ、うなだれつつ街をよぎれば、家々の門口より、ほの白き乙女の影、走り寄りて桃金嬢《てんにんか》の冠を捧《ささ》ぐとか、真なるもの、美なるもの、兀鷹《はげたか》の怒、鳩《はと》の愛、四季を通じて五月の風、夕立ち、はれては青葉したたり、いずかたよりぞレモンの香、やさしき人のみ住むという、太陽の国、果樹の園、あこがれ求めて、梶《かじ》は釘づけ、ただまっしぐらの冒険旅行、わが身は、船長にして一等旅客、同時に老練の司厨長《しちゅうちょう》、嵐よ来い。竜巻よ来い。弓矢、来い。氷山、来い。渦まく淵を恐
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