はるなどは、とんでもない愚かな事で、ばからしいにも程がございます。そのやうな、ややこしい理由など、一つも無いのでございます。大君への忠義の赤心に、理由はございません。将軍家に於いても、ただ二念なく大君の御鴻恩に感泣し、ひたすら忠義の赤誠を披瀝し奉らん純真無垢のお心から、このやうなお歌をお作りになつたので、なんの御他意も無かつたものと私どもには信ぜられるのでございます。御胸中にたとひ幽かにでも御他意の影があつたら、とても、このやうに高潔清澄の調べが出るものではございませぬ。将軍家はこの時は御年わづかに二十二歳でごさいましたが、このとしの暮に、例の、鎌倉右大臣家集または金槐和歌集とのちに称せられた御自身の和歌集を御みづからお編みになつてその折に、この三首のお歌を和歌集の巻軸として最後のとどめの場所にお据ゑになり、やがてその御歌集を仙洞御所へも捧げたてまつつた御様子でございました。私どもの日常拝しましたところでは、あの将軍家でさへ、決して普通のお生れつきではなく、ただ有難く尊く目のくらむ思ひがするばかりでございましたのに、その将軍家を御一枚の御親書によつて百の霹靂に逢ひし時よりも強く震撼せし
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