いて、衣服調度ことごとく金銀錦繍に非ざる無く、陽を受けて燦然と輝き、拝する者みな、うつとりと夢見るやうな心地になつてしまひましたさうで、けれども花嫁さまの御輿から幽かに、すすり泣きのお声のもれたのを、たしかに聞いたと言ひ張る人もございましたさうで、まさか、そのやうな事のあるべき筈はございませぬが、でも御年わづか十三歳、見知らぬ遠いあづまの国へ御下向なさるのでございますから、ずいぶんお心許なく思召したに違ひございませぬ。将軍家に於いても、それを御明察なさらぬわけはなく、何かと優しくおいたはりになつた事と存ぜられます。私が御ところへあがつた時には、御台所さまもすでに御年十七歳、あづまの水にも言葉にも、すつかりお馴れの御様子で、京をお恋ひなさるやうな御気色はみぢんもお見せになりませんでした。さうして故右大臣さま御在世中は、ただの一度も京へおいでになられた事もなく、しんから鎌倉のお人になり切つて居られて、右大臣さまがあのやうな御最期なされたその翌日、荘厳房律師行勇さまの御戒師にて、ほとんど御家人のどなたよりもさきに御剃髪なさいました。風にも堪へぬやうな、弱々しく※[#「藹」の「言」に代えて「月
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