き告げ有りけるを、驚かぬこそはかなけれ、さるほどに石階に近づかせ給ふ時、いづくよりともなく、美僧あらはれ来て、将軍を犯し奉る、はじめ一太刀は笏にて合せ給へども、次の太刀にぞ御首は落され給ひけり、文章博士仲章、因幡前司師憲も斬られけり、前後に候ひける随兵ども、こは如何なる事ぞやとて、あわて騒ぎて宮の中に馳せ込むといへども、かたきは誰とも知らず、頃は正月廿七日の戌の時の事なれば、暗さは暗し、上を下に返して、どよむ声おびただし、かかりける所に、上宮の砌にて、阿闍梨公暁、父のかたきを討つと名乗られつるといふ事ありて、軍勢ども、すなはちかの禅師がおはします雪下の本坊を襲ふところに、ここには、おはしまさずとて兵ども帰りけり、さても別当、公暁とは、故右大将殿の御嫡孫にして金吾将軍の二男なり、御母は、賀茂の六郎重長の女にてぞおはしける、みなし児にて、おはせしを、祖母の二位の禅尼、ふびんに思召し、鶴岳八幡宮の別当職に附せらる、かねて将軍ならびに右京大夫義時を討たんとて窺ひ給ふといへども、未だ本望をとげ給はず、この拝賀の時節を、天の与へと喜びて、おぼし立つところに、義時こそ、御剣の役に定りける由聞こしめし
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