端から精出して御覧になつて、また、いままで御決裁をお怠りになつてゐたために、諸方の訴訟がずいぶんたまつてしまつてゐるといふ事をお聞きになつて、それも必ず年内に片づけるやうにしたいと仰せになつてお役人を督励してどしどしお片づけに相成り、今はなんとしても渡宋せずにはやまぬといふ御意気込みのやうで、このやうに将軍家を異様にせきたてるものは、いつたい、なんであらうと私は将軍家のその頃の日夜、そはそはと落ちつかず御いそがしさうになさつて居られるのを拝して、考へた事でございましたが、御目的は、勿諭医王山ではない、陳和卿のいやしい心をお見抜き出来ぬ将軍家ではございませんし、何でもちやんとご存じの上で和卿をほんの一時、御利用なされてゐるだけの事に違ひないので、行先きは宋でなくてもいいのだ、御目的は、たつた一年でも半歳でも、ただこの鎌倉の土地から遁れてみたいといふところにあるのだ、建保三年十一月の末、和田左衛門尉義盛以下将卒の亡霊が、将軍家の御枕上に、ぞろりと群をなして立つたといふ、その翌朝、にはかに、さかんな仏事を行ひましたけれど、心ならずもその寵臣の一族を皆殺しにしてしまつた主君の御胸中は、なかなか
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