に相成り、その場には将軍家と私たち少数の近習の他に、相州さま、入道さま、民部大夫行光さまだけが伺候して余人は遠ざけられ、将軍家御直々のお裁きが行はれました。忠綱さまと義村さまは、お庭の簀子の円座におすわりになつて、まづ義村さまが、このたび和田左衛門尉義盛の政所襲来と同時に、義村、政所の前の南側に馳せ向ひ、まつさきに敵勢に矢を射込みましたが、塵ひとつ義村の眼前を駈け行くものは見受けられませんでした、といかにも実直さうに申し述べました。忠綱さまはせき込んで、いやいや忠綱ひとり、忠綱ひとり先登に進みました、南側も北側もありません、まつさきかけて進みました、うしろには自分の子の経朝、朝定がつづき、三浦氏は、そのまたうしろではなかつたでせうか、あまりかけ離れてゐると塵ひとつも見えない道理で、或いはまた三浦氏も実は盲目なのかも知れず、盲目は相手になりませぬゆゑ、どうかあの場に居合せた士卒たちを捜し出してそれにお尋ねのほどをお願ひ申し上げまする、とお顔を真赤になさつてどもりどもりおつしやいましたが、あまりお口汚いので、相州さまは片手を挙げて忠綱さまを制し、将軍家にちらと目くばせをなさいました。忠綱さ
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