将軍家を拝したのは、私にとつて、御奉公以来まことに、はじめての事でございました。何事にも既に御興趣を失ひなされたやうな、下衆の言ふ、それこそ浮かぬお顔をなさつて居られたのでございます。それから四、五日経つて、相州さまが、へんな薄笑ひを浮べて御前に伺候し、
「ただいま人から承りましたが、囚人胤長の屋敷を、」と言ひかけたら、すぐに、
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アレハ和田ニ
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とうつむいたまま低くおつしやいました。
相州さまは真面目になつて、
「それだけはお取消しを願ひます。ひどく悪い先例になります。謀叛人の領地を、その一族の者に、」といつになく強い語調でおつしやつて、ふいとお首を傾けて考へ、それから急にお声をひそめて、「いや、こればかりは、いけませぬ。」
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和田ガ喜ンデヰルサウデス
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将軍家は、やつぱりお弱い御口調でおつしやいました。
「お心の程は拝察できまするが、今後のこともあります。くどくは申し上げませぬ。お心を鬼になさいませ。」
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ソレホド大キナ事トモ思ヘヌ
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「大
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