な話で、故右大将家をまづまつさきにお助け申したのはこの北条家でございまして、和田左衛門尉義盛さまなど、よく御挙兵以来の御自身の軍功を御自慢なさいますが、伊豆の流人の頼朝公を、一目見てその非凡の御人物たることを察知いたし、わが長女との御親交をもあらはに怒り、ひそかに許容し、今を時めく平家の御威勢も恐れずこれをかくまひ申し、百人にも足らぬ一族郎党をことごとく献じて、伊豆の片隅に敢然と源家の旗をひるがへさせたお方は、余人ではございませぬ、この相州さまのお父君時政公でございました。その頃の北条氏には、たいした勢力もございませんでしたでせうに、いくら故将軍家の御人物を見込んだとて、時政公もまことに無謀な御決意をなさいましたもので、治承四年、以仁王よりの平家討伐の御令旨を賜つて勇気百倍、まづ戦の門出に伊豆の目代、平の兼隆を血祭りにあげようといふ事になり、お若いながらも御如才のない故将軍家は、出発に先立ち北条氏の一族郎党を煩をいとはずひとりひとり順々に別室へお招きになつて、汝ひとりが頼みだ、とおつしやいましたさうで、おのおのご自分ひとりが特に頼朝公の御信任を得てゐるのだと思ひ込み士気大いにあがり、け
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