所はいよいよ怒りかつは泣き、牧のお方まで、共にわめきなされ、御台所の父君の時政公も、娘たちには同情したいが、将軍家にも恐縮ですし、閉口し切つて、右大将家には何も告げずに一族を連れて北条の里へ帰つておしまひになつて、その時、右大将家は梶原の景季さまに向つておつしやるには、たかが婦女子の事から一族を引き連れてその里に帰り謹慎するなどとは、時政も大袈裟な男だ、けれども江馬だけはあの一族でもそんな馬鹿な事はしない、父に従はず鎌倉の家にひとり残つてゐるにちがひないから見て来なさい、とおつしやつたとか。江馬とは時政公の嫡子、すなはちのちの相州さまの事で、梶原の景季さまはさつそく様子を見にまゐりまして、やがてにこにこ笑ひながら帰つて来て、仰せのとほり、義時ひとりぽつんと家に残つて居りました、と申し上げたさうで、右大将家もよろこび、すぐさまお若い義時さまを御前へお召しになつて、汝はわが子孫を託すべき者、と仰せられたとか、この時はその義時さまの実直なお態度のおかげで、すぐに四方八方円満にをさまつたのださうでございますが、お若い時からこのやうに妙にまじめな、お調子には絶対に乗らぬお方であつたやうでございま
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