流れるやうな音とともに二寸ほどの人形になつた。僕は片腕をのばし、その人形をつまみあげ、しさいにしらべた。淺黒い頬は笑つたままで凝結し、雨滴ほどの唇は尚うす赤く、けし粒ほどの白い齒はきつちり並んで生えそろつてゐた。粉雪ほどの小さい兩手はかすかに黒く、松の葉ほど細い兩脚は米粒ほどの白足袋を附けてゐた。僕は墨染めのころものすそをかるく吹いたりなどしてみたのである。



底本:「太宰治全集2」筑摩書房
   1998(平成10)年5月25日初版第1刷発行
入力:赤木孝之
校正:湯地光弘
1999年7月12日公開
2008年3月22日修正
青空文庫作成ファイル:
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