きて遊んでいるのも、わるくないと思っている。
ただ、君への手紙を書く時間が少くて、これには弱っている。たいてい食事後に、いそいで便箋《びんせん》を出して書いているが、書きたい事はたくさんあるのだし、この手紙も二日がかりで書いたのだ。でも、だんだん道場の生活に慣れるに随《したが》って、短い時間を利用する事も上手になって来るだろう。僕はもう何事につけても、ひどく楽天|居士《こじ》になっているようでもある。心配の種なんか、一つも無い。みんな忘れてしまった。ついでに、もうひとつ御紹介すると、僕のこの当道場に於《お》ける綽名は、「ひばり」というのだ。実に、つまらない名前だ。小柴利助《こしばりすけ》という僕の姓名が、小雲雀《こひばり》という具合いにも聞えるので、そんな綽名をもらう事になったものらしい。あまり名誉な事ではない。はじめは、どうにもいやらしく、てれくさくて、かなわなかったが、でもこのごろの僕は、何事に対しても寛大になっているので、ひばりと人に呼ばれても気軽に返事を与える事にしているのだ。わかったかい? 僕はもう昔の小柴じゃないんだよ。いまはもう、この健康道場に於ける一羽の雲雀なんだ。ピ
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