ると、民衆はいよいよ代議士というものを馬鹿にするだけの結果になるだろう。
選挙と言えば、きょうこの道場に於《お》いて、とても珍妙な事件が起った。きょうのお昼すぎ、お隣りの「白鳥の間」から、次のような回覧板が発行せられた。曰《いわ》く、婦人に参政権を与えられたるは慶賀に堪えざるも、このごろの当道場に於ける助手たちの厚化粧は見るに忍びざるものあり、かくては、参政権も泣きます、仄聞《そくぶん》するに、アメリカ進駐軍も、口紅毒々しき婦人を以《もっ》てプロステチュウトと誤断すという、まさに、さもあるべし、これはひとり当道場の不名誉たるのみならず、ひいては日本婦人全体の恥辱なり云々《うんぬん》とあって、それから、お化粧の目立ちすぎる助手さんの綽名《あだな》が洩《も》れなく列記されてあり、「右六名のうち、孔雀《くじゃく》の扮装《ふんそう》は最も醜怪なり。馬肉をくらいたる孫悟空《そんごくう》の如《ごと》し。われらしばしば忠告を試みたるも、更に反省の色なし。よろしく当道場より追放すべし。」と書添えられていた。
お隣りの「白鳥の間」には、前から硬骨漢がそろっていて、助手さんたちに人気のある固パンさんな
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