くいのだが、――お団子《だんご》が、白い袋をかぶって出て来た形であった。色、赤黒く、ただまるまると太っている。これでは、とても画にはなるまい。
「少し健康すぎたね。」と私は小声で杉野君に言うと、
「ううむ、」と杉野君も唸《うな》って、「さっき和服を着ていた時には、これほどでも、なかったんですがね。これあひどいですよ。泣きたくなっちゃった。とにかく、まあ、庭へ出ましょう。」
私たちは庭の桜の木の下に集った。桜の葉は、間断無く散っていた。
「ここへ、ちょっと立ってみて下さい。」杉野君は、機嫌が悪い。
「はい。」女のひとは、性質の素直な人らしく、顔を伏せたまま優しい返事をして、長いドレスをつまみ上げ、指定された場所に立った。とたんに杉野君は、目を丸くして、
「おや、君は、はだしですね。僕はドレスと一緒に靴をそろえて置いた筈《はず》なんだが。」
「あの靴は、少し小さすぎますので。」
「そんな事は無い。君の足が大きすぎるんだよ。なってないじゃないか。」ほとんど泣き声である。
「いけませんでしょうか。」かえって、モデルのほうが無心に笑っている。
「なってないなあ。こんなリイズってあるものか。ゴオ
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