黒髪に身を捕われの境涯か。
この壺に手がある、これこそはいつの日か
よき人の肩にかかった腕なのだ。
73[#「73」は縦中横]
壺つくりの仕事場に昨日《きのう》よって見ると、
千も二千もの土器《かわらけ》がならべてあったよ。
そのおのおのが声なき言葉でおれにきくよう――
壺つくり、売り手、買い手は誰なのかと。
[#改丁]
[#ページの左右中央]
ままよ、どうあろうと
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74[#「74」は縦中横]
マギイ*の酒に酔うたとならば、正《まさ》にそうさ。
異端《いたん》邪教《じゃきょう》の徒というならば、正にそうさ。
しかしわがふるまいを人がどんなにけなしたとて、
われはどうなりもしない、相変らずのものさ。
75[#「75」は縦中横]
わが宗旨はうんと酒のんでたのしむこと、
わが信条は正信と邪教の争いをはなれること。
久遠の花嫁*に欲しい形見は何かときいたら、
答えて言ったよ――君が心のよろこびをと。
76[#「76」は縦中横]
身の内に酒がなくては生きておれぬ、
葡萄酒《ぶどうしゅ》なくては身の重さにも堪えられぬ。
酒姫《サーキイ》がもう
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