、第3水準1−94−8]払[#レ]水者涵澹然。涵澹は水のさま。少し波立つ状態を言う。
九 また新治の地なる者暴雨流潦の経る所に遇うがごとし――又如[#三]新治地着遇[#二]暴雨流潦之所[#一レ]経。新治の地は瓦礫《がれき》を去ったやわらかな土面、雨水にあった跡を言う。潦は路上の流水。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
一〇 風炉――灰うけ、風炉とは風を通すによって名づける。今の風炉は名のみのこるものである。
一一 魚目――小さい湯玉を魚目にたとえる。
一二 縁辺の涌泉蓮珠――湯のにえあがるのを泉にたとえ、湯玉の多いのを連珠にたとえる。
二二 騰波鼓浪――波だち、波うつ。
一四 「華」――茶気。
一五 晴天爽朗なるに浮雲鱗然たるあるがごとし――如[#三]晴天爽朗有[#二]浮雲鱗然[#一]。雲のかたちを魚のうろこにたとえる。
一六 その沫は緑銭の水渭に浮かべるがごとし――其沫者若[#三]緑銭浮[#二]於水渭[#一]。緑銭とは水草の葉。渭は※[#「さんずい+眉」、第3水準1−86−89]《び》の字が正しいであろう。
一七 一椀喉吻潤い、二椀孤悶を破る。三椀枯腸をさぐる。惟うに文字五千巻有り。四椀軽汗を発す。平生不平の事ことごとく毛孔に向かって散ず。五椀肌骨清し。六椀仙霊に通ず。七椀吃し得ざるに也ただ覚ゆ両腋習々清風の生ずるを。蓬莱山はいずくにかある玉川子この清風に乗じて帰りなんと欲す。――一椀喉吻潤。二椀破[#二]孤悶[#一]。三椀捜[#二]枯腸[#一]、惟有[#二]文字五千巻[#一]。四椀発[#二]軽汗[#一]。平生不平事尽向[#二]毛孔[#一]散。五椀肌骨清。六椀通[#二]仙霊[#一]。七椀吃不[#レ]得、也唯覚両腋習習清風生。蓬莱山在[#二]何処[#一]、玉川子乗[#二]此清風[#一]欲[#二]帰去[#一]。枯腸は文藻《ぶんそう》の乏しきを言う。習習は春風の和らぎ舒《の》びるかたち。玉川子とは盧同自身をさす。
一八 関尹――関令尹喜《かんれいいんき》。周の哲学者、姓は尹、名は喜、関の守吏であったので、関尹子と称せられた。
一九 Dr.Paul Carus 著、Taotei king.
二〇 トラスト―― trusts 購買組合の便宜を指すものであろう。
二一 公孫竜《こうそんりゅう》の「堅白論」「白馬非馬論」。
二二 予として冬川を渉るがごとく、猶として四隣をおそるるがごとく、儼としてそれ客のごとく、渙として冰のまさに釈けんとするがごとく、敦としてそれ樸のごとく、曠としてそれ谷のごとく、渾としてそれ濁るがごとし。――予兮若[#二]冬渉[#一レ]川。猶兮若[#レ]畏[#二]四隣[#一]。儼兮其若[#レ]客。渙兮若[#二]冰将[#一レ]釈。敦兮其若[#レ]樸。曠兮其若[#レ]谷。渾兮其若[#レ]濁。(老子古之善為士章第十五)「予として」は前を見、後をおもんぱかるの意。「猶として」は疑いて行かざるの意。渙は物の離散するをいう。敦は敦原の意。樸はあら木。渾は混に同じ、濁るかたち。
二三 慈、険、及不[#三]敢為[#二]天下先[#一]。(天下皆謂章第六十七)
二四 那伽閼剌樹那[#「那伽閼剌樹那」は底本では「那伽閼刺樹那」]――釈迦没後七百年頃南インドに生れる。大乗経典を研究、その弘伝者として大乗諸宗の祖師といわれる。
二五 商羯羅阿闍梨――七八九年頃南インドに生れる。インド教の復興者、婆羅門哲学の大成者として知られる。
二六 無明――経験界。
二七 馥柯羅摩訶秩多――維摩経ではこの典拠不明。維摩居士のことか。
二八 利休が「富田左近《とみたさこん》へ露地のしつらい教うるとて」示したものは「樫《かし》の葉のもみじぬからにちりつもる奥山寺の道のさびしさ。」で、つづく歌は、千家流に伝える七事の式おきてがきの一つである。
二九 見渡せば……――藤原定家作。千家流に伝えられる七事式の法策書《おきてがき》の一つである。
三〇 夕月夜……――「茶話指月集」による。
三一 ハルンアルラシッド――『アラビアン・ナイト』(千一夜物語)の主人公。
三二 後撰集に僧正遍昭《そうじょうへんじょう》作として同様のものがある。なお、為頼朝臣集《ためよりあそんしゅう》に「折りつれば心もけがるもとながら今の仏にはな奉る」とあり、光明皇后《こうみょうこうごう》の御詠として「わがために花は手折《たお》らじされどただ三世の諸仏の前にささげん」としたものもある。
三三 「天地不仁。」――原文は「仁とせず」あるいは「不仁ならんや」と読む人もあるがここには「仁ならず」として引用してある。
三四 大師作、『秘蔵宝鑰《ひぞうほうやく》』の序より。
三五 梵――インドの波羅門教における最高原理。
三六 花をのみ……――藤原家隆作。利休はわびの本意とてこの歌を常に吟じておった
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