とかお言いだが、この先まだどんな生活があるのかね?」と、栗毛の馬がたずねました。
「まあおじさん、あんたは知らないの、私が一ぺん死んで、だんだらのきれいな羽をした蝶々になって生まれ変わることをさ?」
 栗毛もとかげもまたかたつむりも、そうとは知らずにいたのですが、昆虫たちはどうにか知ってだけはおりました。そこで一座の話はしばらくとだえました。だれ一人として、未来の生活について条理《すじみち》の立った文句の言える者がなかったからでありました。
「確乎たる信念には、よろしく敬意を払うべきですな」――やがてこおろぎが、コロコロ申しました、「まだ何かおっしゃりたい方はありませんか? あなた一ついかがです?」と、こおろぎが二匹のはえに向かって申しましたので、年上の方がこう答えました。
「私どもは、べつに不仕合わせな暮らしをして参ったとも申せませんわ。私どもは今しがた、お邸《やしき》の部屋から出て参りましたの。ちょうど奥様がジャムをたくさん煮て、浅い鉢に分けていらしたので、私どもはふたの下へもぐり込んで、どっさりちょうだいしましたわ。私どもは何の不足もございません。お母さんはジャムに脚をとられてしまいましたけど、今さらどうしようもありませんわ。それにお母さんはもうずいぶんと長生きをしたんですものね。とにかく私どもは何の不足もございませんわ。」
「皆さん」ととかげが申しました、「あたくしは、皆さんのおっしゃることは一々ごもっともだと存じます! しかしまた、一面から申しますと……。」
 けれどとかげは、一面から言うとどうなるのか、その先はとうとう言わずじまいになりました。なぜといって、そのとき不意に何ものかが、彼女の尻尾をぎゅっと地面へ押しつけたのを、感じたからでありました。
 それは昼寝の夢からさめた馭者のアントンが、栗毛を迎えにやって来たのでありました。アントンが大きな長靴で、その会合の席へ踏み込んで、一座の者を押しつぶしてしまったのでありました。無事だったのは二匹のはえだけで、これはジャムだらけになって死んでしまった母親のからだをしゃぶりに、さっさと飛んで行きましたし、一ぽうとかげは命からがら、尾をちょん切られたままで逃げ出しました。アントンは栗毛のたてがみをつかまえて、庭から引き出して行きました。それはたるをつけて水をくみに行くためでした。道々アントンは、『ドオドてばよお、
前へ 次へ
全7ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ガールシン フセヴォロド・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング