であります。宗教、信仰、経済に関係なしと唱《とな》うる者は誰でありますか。宗教は詩人と愚人とに佳《よ》くして実際家と智者に要なしなどと唱うる人は、歴史も哲学も経済も何にも知らない人であります。国にもしかかる「愚かなる智者」のみありて、ダルガスのごとき「智《さと》き愚人」がおりませんならば、不幸一歩を誤りて戦敗の非運に遭いまするならば、その国はそのときたちまちにして亡びてしまうのであります。国家の大危険にして信仰を嘲り[#「国家の大危険にして信仰を嘲り」に白丸傍点]、これを無用視するがごときことはありません[#「これを無用視するがごときことはありません」に白丸傍点]。私が今日ここにお話しいたしましたデンマークとダルガスとにかんする事柄は大いに軽佻浮薄《けいちょうふはく》の経世家を警《いまし》むべきであります。



底本:「後世への最大遺物 デンマルク国の話」岩波文庫、岩波書店
   1946(昭和21)年10月10日第1刷発行
   1976(昭和51)年3月16日第30刷改版発行
   1994(平成6)年8月6日 第64刷発行
入力:ゆうき
校正:吉田亜津美
2000年1月7日公開
2003年7月27日修正
青空文庫作成ファイル:
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