の許しによって、一年のうち夜の一時間だけは、この人たちの教区に属する教会で、愛人と愛人とが逢うことができるのです。ここで、この人たちが、影の聖餐祭に集まって、手と手を握り合うことを許されています。私もここで、まだ死んでいないあなたに逢うことを許されたのは、これも神様のあたえてくだされた一つの愉楽なのです」
 そこで、カトリーヌ・フォンテーヌは次のように答えました。
「もし私が、いつか森の中であなたに飲み水をさしあげた時のように美しくなれますなら、わたしは喜んで死にたいと思います」
 二人が低い声でこんな話をしている間に、ひどく年をとった僧が大きな銅盤を礼拝者の前に差し出しながら、喜捨の金を集めに来ました。礼拝者たちは交るがわるにその中へ、遠い以前から通用しない貨幣を置きました。六ポンドのエクー古銀貨、英国のフロリン銀貨、ダカット銀貨、ジャコビュスの金貨、ローズノーブルの銀貨などが音もなしに盤のなかへ落ちました。その盤はついに騎士の前に置かれたので、彼はルイス金貨を落としましたが、今までの金貨や銀貨と同じように、これも音を立てませんでした。
 それから、かの老僧はカトリーヌ・フォンテーヌ
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