タザアルと其従者とは塔を下つた。それから一斗の没薬を調へ、旅隊をつくつて、星の導く方に出発した。
一行は長い間、見もしらぬ国から国へと旅を続けた。其の間も星は常に一行の前に立つて導いてくれるのである。
或日、三の路が一になる処へ来ると、一行は二人の王が無数の行列を従へて来るのに出遇つた。其一人は若くて美しい顔をしてゐる。
それがバルタザアルに礼をしてかう云ふのである。
『寡人の名はガスパアと云ふ。ユダヤのベツレヘムに生れようとしてゐる小児へ贈物の黄金《きん》を持つて行く所なのだ。』
第二の王が代つて前へ出た。老人で白い髯が胸を掩つてゐる。
『寡人の名はメルキオルと云ふ。人間に真理を教へようとする尊い小児に乳香を持つて行く所なのぢや。』
『寡人も卿等の行く所へ行かなければならぬ。寡人は楽欲に克つた其の為に、星が寡人に言をかけてくれたのだ』とバルタザアルが云つた。
『寡人は驕慢に克つた。寡人の召されたのは其為ぢや』とメルキオルが云つた。
『寡人は虐行に克つた。其故に寡人は卿等と共に行くのだ』とガスパアが云つた。
かくして三人の賢人は共に旅を続けた。東方に見えた星は彼等に先立つて、
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