ぽつんとあけて、その孔からお日さまをのぞきました。それはおにいさまたちのすんだきれいな目をみるような気がしました。あたたかいお日さまがほおにあたるたんびに、おにいさまたちがこれまでにしてくれた、のこらずのせっぷんをおもい出しました。
きょうもきのうのように、毎日、毎日、すぎていきました。家のぐるりのいけ垣を吹いて、風がとおっていくとき、風はそっとばら[#「ばら」に傍点]にむかってささやきました。
「おまえさんたちよりも、もっときれいなものがあるかしら。」
けれどもばら[#「ばら」に傍点]は首をふって、
「エリーザがいますよ。」とこたえました。
それからこのうちのおばあさんは、日曜日にはエリーザのへやの戸口に立って、さんび歌の本を読みました。そのとき、風は本のページをめくりながら、本にむかって、
「おまえさんたちよりも、もっと信心ぶかいものがあるかしら。」といいました。するとさんび歌の本が、
「エリーザがいますよ。」とこたえました。そうしてばら[#「ばら」に傍点]の花やさんび歌の本のいったことはほんとうのことでした。
このむすめが十五になったとき、またご殿にかえることになっていま
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