かぶら矢のようにうなってとびつづけました。
でもなにしろ、いもうとひとりつれているのですから、おくれがちで、いつものようにはとべません。するうち、いやなお天気になって来て、夕暮もせまって来ました。エリーザはしずみかけているお日さまをながめて、まだ海のなかにさびしく立っている岩というのが目にはいらないものですから、心配そうな顔をしていました。はくちょうたちがよけいはげしく羽ばたきしはじめたようにおもわれました。ああ、おにいさまたちみんなが[#「みんなが」は底本では「みんなか」]、おもいきって早くとぶこともできないのは、エリーザのためだったのです。やがてお日さまがしずむと、みんなは人間にかえって滝のなかに落ちておぼれなければなりません。そのとき、エリーザはこころの底から、お祈のことばをとなえました。でもまだ岩はみつかりません。まっくろな雲がむくむく近よって来ました。やがてそれは大きなきみわるく黒い雲の山になって、まるで、鉛のかたまりがころがってくるようでした。ぴかりぴかり稲妻《いなづま》が、しきりなしに光りだして来ました。
いよいよお日さまが海のきわまで落ちかけて来ました。エリーザの胸
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