たしたちといっしょに行く勇気があるかい。わたしたち、腕一本でも、おまえをかかえて、この森を越すだけの力はある。だからみんなのつばさを合わせたら、海のうえをはこんでわたれないことはなかろう。」
「ええ、ぜひつれていってください。」と、エリーザはいいました。
そこでひと晩じゅうかかって、みんなしてよくしなうかわやなぎ[#「かわやなぎ」に傍点]の木の皮と、強いあし[#「あし」に傍点]とで網を織りました。それは大きくて丈夫にできました。この網のうえにエリーザは横になりました。やがてお日さまがのぼると、おにいさまたちははくちょうのすがたに変って、てんでんくちばしで網のさきをくわえました。そうして、まだすやすやねむっている、かわいいいもうとをのせたまま、雲のうえたかくとんでいきました。ちょうどお日さまの光が顔にあたるものですから、一羽のはくちょうは、いもうとのあたまのうえでとんでやって、その大きなつばさでかげをこしらえてやりました。――
やがてエリーザが目をさましたじぶんには、もうずいぶんとおくへ来ていました。エリーザはまるで夢をみているような気持でした。空を通って、海を越えて、高くはこばれて行くということが、どんなにふしぎにおもわれたことでしょう。すぐそばには、おいしそうにじゅくしたいちごの実をつけたひと枝と、いいかおりのする木の根がひと束《たば》おいてありました。それらはあのいちばん年の若いおにいさまが、取って来てくれたものでした。いもうとはそのおにいさまのはくちょうをみつけて、下からにっこり、うれしそうにわらいかけました。あたまの上をとんで、つばさでかげをつくっていてくれているのも、このおにいさまでした。
もうすいぶん高くとんで、はじめ下でみつけた大きな船は、いつか白いかもめのように、ぼっつり水のうえに浮いていました。ひとかたまりの大きな雲が、すぐうしろにぬっとあらわれましたが、それはどこからみても、ほんとうの山でした。その雲の山に、エリーザはじぶんの影や十一羽のはくちょうの影がうつるのをみました。みんな、それこそ見上げるような大きな鳥になってとんでいました。まったくみたこともないすばらしい影でした。でもお日さまがずんずん高くのぼって、雲がずっとうしろに取りのこされると、その影のようにうかんでいる絵が消えてなくなりました。
まる一日、はくちょうたちは、空のなかを、
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