エリーザはみました。一羽また一羽と、あとからあとから行儀よくつづいてくるのでそれはただひとすじながくしろい帯をひいてとるようにみえました。そのときエリーザは坂にあがって、そっとやぶかげにかくれました。はくちょうたちは、すぐそのそばへおりて来て、大きな白いつばさをばたばたやりました。いよいよお日さまが海のなかにしずんでしまうと、とたんに、はくちょうの羽根がぱったりおちて、十一人のりっぱな王子たちが、エリーザのおにいさまたちが、そこに立ちました。エリーザはおもわず、あッと大きなさけび声をたてました。それはおにいさまたちはずいぶん、せんとかわっていました。けれど、やはりそれにちがいないことが、すぐとわかったからでした。そこでみんなの腕のなかにとびこんでいって、ひとりひとり、名まえをよびました。王子たちは、そうして王女がまたでて来たのをみて、それはもうせいも高くなり、きりょうもずっとうつくしくなってはいましたけれど、じぶんたちのいもうとということがわかって、いいようもなくうれしくおもいました。みんなは泣いたりわらったりしました、そうして、こんどのおかあさまが、きょうだいのこらずに、どんなにひどいことをしたか、おたがいの話でやがてわかりました。
[#挿絵(fig42384_02.png)入る]
「ぼくたちきょうだいはね、」と、いちばん上のおにいさまがいいました。「みんな、お日さまが空にでているあいだ、はくちょうになってとびまわるが、お日さまがしずむといっしょに、また人間のかたちにかえるのだよ。だから、しじゅう気をつけて、お日さまがしずむころまでには、どこかに、かならず足を休める場所をみつけておかなければならないのさ。それをしないで、うかうか雲のほうへとんで行けば、たちまち人間とかわって、海の底へしずまなければならないのだよ。わたしたちはここに住んでいるのではない。海のむこうに、ここと同様、きれいな国がある。でもそこまでいく道はとても長くて、ひろい海のうえをわたっていかなければならない。その途中には夜をあかす島もない。ただちいさな岩がひとつ海のなかにつきでているだけだ。でもどうやら、そこにはみんながくっつき合ってすわるだけのひろさはある。海が荒れているときには、波がかぶさってくるが、それでも、その岩のあるのがどのくらいありがたいかしれない。そこでぼくたち、夜だけ、人間のかたちに
前へ 次へ
全22ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング