、いつも馬車の先に立ってあるいて行っては、麦刈り、草刈りをしている男とみると、おなじようなことをいって、おどしました。
「王様がお通りになったら、これはみんなカラバ侯爵《こうしゃく》の畠でございますというのだ。そういわないと、おまえたちみんな、挽《ひ》き肉にしてしまうぞ。」
 そういってあるいたあとに、すぐ王様は通りかかって、麦畠も、牧場《まきば》もみんなカラバ侯爵《こうしゃく》のものだときかされました。そのたんびに、王様は、カラバ侯爵《こうしゃく》が、たいへんな広い領地《りょうち》をもっているのに、すっかりびっくりしておしまいになりました、そうしてそのたんびに侯爵《こうしゃく》にむかって、
「どうもたいしたご財産《ざいさん》で。」といいました。
 このあいだに、猫吉親方は、ひとりさきに、どんどんあるいて行って、とうとう人くい鬼が住んでいる、りっぱなお城へ来ました。この人くい鬼は、世にもすばらしい大金持で、王様が、みちみち通っておいでになった、カラバ侯爵《こうしゃく》のものだという広大《こうだい》な領地《りょうち》も、じつはみんな人くい鬼のものでした。猫吉は、この人くい鬼のことをよく聞
前へ 次へ
全14ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング