るものでもない。まあ、お互《たが》いに自分《じぶん》の生《う》まれついた身分《みぶん》に満足《まんぞく》して、獣《けもの》は獣同士《けものどうし》、鳥《とり》は鳥同士《とりどうし》、人間《にんげん》は人間同士《にんげんどうし》、仲《なか》よく暮《く》らすほどいいことはないのだ。そのどうりが分《わ》かったら、さあ、みんなおとなしくお帰《かえ》り、お帰《かえ》り。」
「どうもありがとうございました。これからはもう咎《とが》のないねずみを取《と》ることは、やめましょう。」
「そうです。わたくしどもも、けっしてよけいな人の物《もの》を取《と》ったりなんかいたしません。」
 猫《ねこ》とねずみは口々《くちぐち》にこう言《い》って、和尚《おしょう》さんにおじぎをして、ぞろぞろ帰《かえ》っていきました。



底本:「日本の神話と十大昔話」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年5月10日第1刷発行
   1992(平成4)年4月20日第14刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年8月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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