へび》が一|匹《ぴき》入《はい》っていました。見《み》ると忠明《ただあきら》のうった針《はり》が、ちゃんと両方《りょうほう》の目にささっていました。
 そして義家《よしいえ》がつい無造作《むぞうさ》に切《き》り込《こ》んだ短刀《たんとう》は、りっぱに蛇《へび》の首《くび》と胴《どう》を切《き》り離《はな》していました。
 御堂殿《みどうどの》は感心《かんしん》して、
「なるほどその道《みち》に名高《なだか》い名人《めいじん》たちのすることは、さすがに違《ちが》ったものだ。」
 といいました。

     六

 八幡太郎《はちまんたろう》は七十|近《ちか》くまで長生《ながい》きをして、六、七|代《だい》の天子《てんし》さまにお仕《つか》え申《もう》し上《あ》げました。ですからその一|代《だい》の間《あいだ》には、りっぱな武勇《ぶゆう》の話《はなし》は数《かず》しれずあって、それがみんな後《のち》の武士《ぶし》たちのお手本《てほん》になったのでした。



底本:「日本の英雄伝説」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年6月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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