た》にぶつかったような音《おと》がして、矢《や》ははねかえって来《き》ました。藤太《とうだ》は、
「しまった。」
 と叫《さけ》んで、手早《てばや》く二の矢《や》をつがえて、いっそう強《つよ》く引《ひ》きしぼって放《はな》しましたが、これもはねかえって来《き》ました。もうあとに矢《や》は一|本《ぽん》しか残《のこ》ってはおりません。むかではずんずん近寄《ちかよ》って来《き》ました。龍王《りゅうおう》はがっかりして死《し》んだようになっていました。
 その時《とき》藤太《とうだ》はふと思《おも》いついたことがあって、三|本《ぼん》めの矢《や》の根《ね》を口にくくんで、つばでぬらしました。そして弓《ゆみ》につがえて、ひょうと放《はな》しますと、こんどこそ矢《や》はぐっさりむかでのみけんにささりました。人間《にんげん》のつばをむかでがきらうということを藤太《とうだ》はふと思《おも》い出《だ》したのでした。
 すると何《なん》千とない火《ひ》の玉《たま》は一|度《ど》にふっと消《き》えました。大《おお》あらしが吹《ふ》いて、雷《かみなり》が鳴《な》り出《だ》しました。龍王《りゅうおう》も家来《
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