うぎゅう、ぎゅうぎゅう、押《お》さえつけました。
 鬼《おに》の大将《たいしょう》は、桃太郎《ももたろう》の大力《だいりき》で首《くび》をしめられて、もう苦《くる》しくってたまりませんから、大《おお》つぶの涙《なみだ》をぼろぼろこぼしながら、
「降参《こうさん》します、降参《こうさん》します。命《いのち》だけはお助《たす》け下《くだ》さい。その代《か》わりに宝物《たからもの》をのこらずさし上《あ》げます。」
 こう言《い》って、ゆるしてもらいました。
 鬼《おに》の大将《たいしょう》は約束《やくそく》のとおり、お城《しろ》から、かくれみのに、かくれ笠《がさ》、うちでの小《こ》づちに如意宝珠《にょいほうじゅ》、そのほかさんごだの、たいまいだの、るりだの、世界《せかい》でいちばん貴《とうと》い宝物《たからもの》を山のように車《くるま》に積《つ》んで出《だ》しました。
 桃太郎《ももたろう》はたくさんの宝物《たからもの》をのこらず積《つ》んで、三にんの家来《けらい》といっしょに、また船《ふね》に乗《の》りました。帰《かえ》りは行きよりもまた一そう船《ふね》の走《はし》るのが速《はや》くって、間《ま》もなく日本《にほん》の国《くに》に着《つ》きました。
 船《ふね》が陸《おか》に着《つ》きますと、宝物《たからもの》をいっぱい積《つ》んだ車《くるま》を、犬《いぬ》が先《さき》に立《た》って引《ひ》き出《だ》しました。きじが綱《つな》を引《ひ》いて、猿《さる》があとを押《お》しました。
「えんやらさ、えんやらさ。」
 三にんは重《おも》そうに、かけ声《ごえ》をかけかけ進《すす》んでいきました。
 うちではおじいさんと、おばあさんが、かわるがわる、
「もう桃太郎《ももたろう》が帰《かえ》りそうなものだが。」
 と言《い》い言《い》い、首《くび》をのばして待《ま》っていました。そこへ桃太郎《ももたろう》が三にんのりっぱな家来《けらい》に、ぶんどりの宝物《たからもの》を引《ひ》かせて、さもとくいらしい様子《ようす》をして帰《かえ》って来《き》ましたので、おじいさんもおばあさんも、目も鼻《はな》もなくして喜《よろこ》びました。
「えらいぞ、えらいぞ、それこそ日本一《にっぽんいち》だ。」
 とおじいさんは言《い》いました。
「まあ、まあ、けががなくって、何《なに》よりさ。」
 とおばあさ
前へ 次へ
全9ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング