ことを思い出しませんでした。
 十日ばかり後《あと》のことでした。一雄は縁先で遊んでいる内ふと見る気もなしに石の間に挿まって、皮が剥《は》げてボール紙ばかりになっているカルタを一枚見つけました。急に花ガルタが惜しくなって来ました。
 貞吉はおこっているに違いない、貞吉に悪かった、一雄はそう思って何だか悲しくなりました。



底本:「赤い鳥傑作集 坪田譲治編」新潮文庫、新潮社
   1955(昭和30)年6月25日発行
   1974(昭和49)年9月10日29刷改版
   1984(昭和59)年10月10日44刷
初出:「赤い鳥」大正10年3月号
入力:鈴木厚司
校正:林 幸雄
2001年3月28日公開
2001年4月2日修正
青空文庫作成ファイル:
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