けておいでになりました。このおかあさまは、りこうな方でしたけれど、いちだんたかい身分をほこりたさに、しっぽにつける飾りのかき[#「かき」に傍点]をごじぶんだけは十二もつけて、そのほかはどんな家柄のものでも、六つから上つけることをおゆるしになりませんでした。――そんなことをべつにすれば、たんとほめられてよい方でした。とりわけ、お孫さんにあたるひいさまたちのおせわをよくなさいました。それはみんなで六人、そろってきれいなひいさんたちでしたが、なかでもいちばん下のひいさまが、たれよりもきりょうよしで、はだはばらの花びらのようにすきとおって、きめがこまかく、目はふかいふかい海のようにまっ青でした。ただほかのひいさまたちとおなじように、足というものがなくて、そこがおさかなの尾になっていました。
ながいまる一日、ひいさまたちは、海の底の御殿の、大広間であそびました。そとの壁からは、生きた花が咲きだしていました。大きなこはく[#「こはく」に傍点]の窓をあけると、おさかながつういとはいって来ます。それはわたしたちが窓をあけると、つばめがとび込んでくるのに似ています。ただ、おさかなは、すぐと、ひいさまたちの所まで泳いで行って、その手からえさをとってたべて、なでいたわってもらいました。
御殿のそとには、大きな花園があって、はでにまっ赤な木や、くらいあい色の木がしげっていました。その木の実は金のようにかがやいて、花はほのおのようにもえながら、しじゅうじくや葉をゆらゆらさせていました。海の底は、地面からしてもうこまかい砂でしたが、それは硫黄《ゆおう》の火のように青く光りました。そこでは、なにもかも、ふしぎな、青い光につつまれているので、それはふかい海の底にいるというよりも、なにか宙《ちゅう》に浮いていて、上にも下にも青空をみているようでした。海のないでいるときには、お日さまが仰げました。それはむらさきの花のようで、そのうてなからながれだす光が、海の底いちめんひろがるようにおもわれました。
ひいさまたちは、めいめい、花園のなかに、ちいさい花壇《かだん》をもっていて、そこでは、すき自由に、掘りかえすことも植えかえることもできました。ひとりのひいさまは、花壇を、くじらの形につくりました。するともうひとりは、じぶんのは、かわいい人魚に似せたほうがいいとおもいました。ところが、いちばん下のひいさ
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