》り言《ごと》を言《い》いながら、道《みち》ばたの石《いし》の上に「どっこいしょ。」と腰《こし》をかけて、つづらを下《お》ろして、急《いそ》いでふたをあけてみました。
するとどうでしょう、中を目のくらむような金銀《きんぎん》さんごと思《おも》いの外《ほか》、三《み》つ目《め》小僧《こぞう》だの、一《ひと》つ目《め》小僧《こぞう》だの、がま入道《にゅうどう》だの、いろいろなお化《ば》けがにょろにょろ、にょろにょろ飛《と》び出《だ》して、
「この欲《よく》ばりばばあめ。」と言《い》いながら、こわい目をしてにらめつけるやら、気味《きみ》の悪《わる》い舌《した》を出《だ》して顔《かお》をなめるやらするので、もうおばあさんは生《い》きた空《そら》はありませんでした。
「たいへんだ、たいへんだ。助《たす》けてくれ。」
とおばあさんは金切《かなき》り声《ごえ》を上《あ》げて、一生懸命《いっしょうけんめい》逃《に》げ出《だ》しました。そしてやっとのことで、半分《はんぶん》死《し》んだようにまっ青《さお》になって、うちの中にかけ込《こ》みますと、おじいさんはびっくりして、
「どうした、どうした。」
と言《い》いました。おばあさんはこれこれの目にあったと話《はな》して、「ああもう、こりごりだ。」と言《い》いますと、おじいさんは気《き》の毒《どく》そうに、
「やれやれ、それはひどい目にあったな。だからあんまりむじひなことをしたり、あんまり欲《よく》ばったりするものではない。」と言《い》いました。
底本:「日本の神話と十大昔話」講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年5月10日第1刷発行
1992(平成4)年4月20日第14刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年8月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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