て、しきりとつなをうごかして、その大そりからはなれようとしましたが、小そりはしっかりと大そりにしばりつけられていて、どうにもなりませんでした。ただもう、大そりにひっぱられて、風のようにとんでいきました。カイは大声をあげて、すくいをもとめましたが、たれの耳にも、きこえませんでした。雪はぶっつけるようにふりしきりました。そりは前へ前へと、とんでいきました。ときどき、そりがとびあがるのは、生《いけ》がきや、おほりの上を、とびこすのでしょうか、カイはまったくふるえあがってしまいました。主のおいのりをしようと思っても、あたまにうかんでくるのは、かけざんの九九ばかりでした。
こな雪のかたまりは、だんだん大きくなって、しまいには、大きな白いにわとりのようになりました。ふとその雪のにわとりが、両がわにとびたちました。とたんに、大そりはとまりました。そりをはしらせていた人が、たちあがったのを見ると、毛皮のがいとうもぼうしも、すっかり雪でできていました。それはすらりと、背の高い、目のくらむようにまっ白な女の人でした。それが雪の女王だったのです。
「ずいぶんよくはしったわね。」と、雪の女王はいいました。「
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