ぬがせました。そうしなければ、とてもあつくて、そこにはいられなかったからです。それから、となかいのあたまの上に、ひとかけ、氷のかたまりを、のせてやりました。そして、ひだら[#「ひだら」に傍点]にかきつけてあるもんくを、三べんもくりかえしてよみました。そしてすっかりおぼえこんでしまうと、スープをこしらえる大なべの中へ、たらをなげこみました。そのたら[#「たら」に傍点]はたべることができたからで、この女の人は、けっしてどんなものでも、むだにはしませんでした。
さて、となかいは、まずじぶんのことを話して、それからゲルダのことを話しました。するとフィンランドの女は、そのりこうそうな目をしばたたいただけで、なにもいいませんでした。
「あなたは、たいそう、かしこくていらっしゃいますね。」と、となかいは、いいました。「わたしはあなたが、いっぽんのより糸で、世界中の風をつなぐことがおできになると、きいております。もしも舟のりが、そのいちばんはじめのむすびめをほどくなら、つごうのいい追風がふきます。二ばんめのむすびめだったら、つよい風がふきます。三ばんめと四ばんめをほどくなら、森ごとふきたおすほどのあらしがふきすさみます。どうか、このむすめさんに、十二人りきがついて、しゅびよく雪の女王にかてますよう、のみものをひとつ、つくってやっていただけませんか。」
「十二人りきかい。さぞ役にたつ[#「たつ」は底本では「たっ」]だろうよ。」と、フィンランド[#「フィンランド」は底本では「フィランド」]の女はくりかえしていいました。
それから女の人は、たなのところへいって、大きな毛皮のまいたものをもってきてひろげました。それには、ふしぎなもんじがかいてありましたが、フィンランドの女は、ひたいから、あせがたれるまで、それをよみかえしました。
でも、となかいは、かわいいゲルダのために、またいっしょうけんめい、その女の人にたのみました。ゲルダも目に涙をいっぱいためて、おがむように、フィンランドの女を見あげました。女はまた目をしばたたきはじめました。そして、となかいをすみのほうへつれていって、そのあたまにあたらしい氷をのせてやりながら、こうつぶやきました。
「カイって子は、ほんとうに雪の女王のお城にいるのだよ。そして、そこにあるものはなんでも気にいってしまって、世界にこんないいところはないとおもってい
前へ
次へ
全42ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング