うつくしい花は、のこらずお廊下のところにならべられました。そこを、人びとがあちこちとはしりまわると、そのあおりかぜで、のこらずのすずがなりひびいて、じぶんのこえもきこえないほどでした。
皇帝のおでましになる大ひろまのまん中に、金のとまり木がおかれました。それにあのさよなきどりがとまることになっていました。宮中の役人たちのこらず、そこにならびました。あのお台所の下ばたらきむすめも、いまではせいしきに、宮中づきのごぜん部係《ぶがかり》にとりたてられたので、ひろ間のとびらのうしろにたつことをゆるされました。みんな大礼服《だいれいふく》のはれすがたで、いっせいに、陛下がえしゃくなさった灰いろのことりに目をむけました。
さて、さよなきどりは、まことにすばらしくうたってのけたので、皇帝のお目にはなみだが、みるみるあふれてきて、それがほおをつたわって、ながれおちたほどでした。するとさよなきどりは、なおといっそういいこえで、それは、人びとのこころのおくそこに、じいんとしみいるように、うたいました。陛下は、たいそう、およろこびになって、さよなきどりのくびに、ごじぶんの、金のうわぐつをかけてやろうとお
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