となく重《かさ》なり合《あ》って死《し》んでいました。
玄翁《げんのう》は今更《いまさら》殺生石《せっしょうせき》におそろしい毒《どく》のあることを知《し》って、ぞっとしました。
もうすっかり明《あか》るくなって、日が昇《のぼ》りかけました。草《くさ》の上の露《つゆ》がきらきら輝《かがや》き出《だ》しました。
玄翁《げんのう》は殺生石《せっしょうせき》の前《まえ》に座《すわ》って、熱心《ねっしん》にお経《きょう》を読《よ》みました。そして殺生石《せっしょうせき》の霊《れい》をまつってやりました。殺生石《せっしょうせき》がかすかに動《うご》いたようでした。
やがてお経《きょう》がすむと、玄翁《げんのう》は立《た》ち上《あ》がって、呪文《じゅもん》を唱《とな》えながら、持《も》っていたつえで三|度《ど》石をうちました。すると静《しず》かに石は真《ま》ん中《なか》から二つにわれて、やがて霜柱《しもばしら》がくずれるように、ぐさぐさといくつかに小さくわれていきました。
その後《のち》旅《たび》の人が殺生石《せっしょうせき》のそばを通《とお》っても、もう災《わざわ》いはおこらなかったそうです。
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年8月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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