リヨンには、新しいやっかいしごとがひとつふえました。なぜというに、きょうだいたちの着物に火のしをかけたり、袖口《そでぐち》にかざりぬいしたりするのは、みんなサンドリヨンのしごとだったからです。ふたりは朝から晩まで、おめかしの話ばかりしていました。
「わたしは、イギリスかざりのついた、赤いビロードの着物にしようとおもうのよ。」と、姉はいいました。
「じゃあ、わたしは、いつものスカートにしておくわ。けれど、そのかわり、金の花もようのマントを着るわ。そうして、ダイヤモンドの帯《おび》をするわ。あれは世間《せけん》にめったにない品物なんだもの。」
 ふたりは、そのじぶん、上手《じょうず》でひょうばんの美容師《びようし》をよんで、頭のかざりから足のくつ先まで、一|分《ぶ》のすきもなしに、すっかり、流行《りゅうこう》のしたくをととのえさせました。
 サンドリヨンも、やはりそういうことのそうだんに、いちいち使われていました。なにしろ、このむすめは、もののよしあしのよく分かる子でしたから、ふたりのために、いっしょうけんめい、くふうしてやって、おまけに、おけしょうまで手つだってやりました。サンドリヨンに
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