まもなく、こんどのおかあさんは、さっそくいじわるの本性《ほんしょう》をさらけ出しました。このおかあさんにとっては、腹ちがいのむすめが、心がけがよくて、そのため、よけいじぶんの生んだこどもたちのあら[#「あら」に傍点]の見えるのが、なによりもがまんできないことでした。そこで、ままむすめを台所《だいどころ》にさげて、女中のするしごとに追いつかいました。お皿を洗ったり、おぜんごしらえをしたり、おくさまのおへやのそうじから、おじょうさまたちのお居間のそうじまで、させられました。そうして、じぶんは、うちのてっぺんの、屋根うらの、くもの巣だらけなすみで、わらのねどこに、犬のようにまるくなって眠らなければなりませんでした。そのくせ、ふたりのきょうだいたちは、うつくしいモザイクでゆかをしきつめた、あたたかい、きれいなおへやの中で、りっぱなかざりのついたねだいに眠って、そこには、頭から足のつまさきまでうつる、大きなすがたみもありました。
かわいそうなむすめは、なにもかもじっとこらえていました。父親は、すっかり母親にまるめられていて、いっしょになって、こごとをいうばかりでしたから、むすめはなにも話しませ
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